臨床工学技士の職場研究(病院)
病院とは
どのような職場か
国家資格である臨床工学技士。2021年実績で2,000人を超える合格者を輩出しております。
そのうち、最も多くの方が、その高い専門性を活かして病院で働いています。
一括りに病院といっても病床規模、診療科目、医療区分での役割などによって、臨床工学技士の働く環境は千差万別。
新入職員としてどういった環境で働くかによって、身に着く臨床経験に大きな違いが生じます。ここでは、職場環境によって臨床工学技士の働き方の違いについてお伝えします。
規模によって変わる働き方の違い
中小規模の急性期病院
中小規模の病院でも、急性期病院として地域の二次救急指定病院など救急を受け入れている病院であれば、ICUや人工心肺装置、人工呼吸器などの生命維持装置や透析ベッド、入院透析患者を受け入れている病院では透析管理など、幅広いスキルを身に付ける事が出来ます。
しかし、そもそも臨床工学技士の人数が少ない場合、休みが少ない・平日の時間外も呼び出しの待機をしなければならないなどの拘束時間が多くあります。人数が少ない分、多くの医療機器を経験できるという意味では、メリットが大きいのですが、時間的制約(当直・オンコール・残業時間など)が大きく体力を必要とするケースが多いです。そのため、就職先として候補に挙げる場合は自分の希望を踏まえ、よく見定めて決めることが重要です。
救命救急センター
救命救急センターとは、救急指定病院のうち急性心筋梗塞、脳卒中、心肺停止、多発外傷、重傷頭部外傷など、二次救急病院では対応できない重篤な患者に対し高度な医療技術を提供する三次救急医療機関です。
救急救命センターは診療科に関わらず、さまざまな患者さんが運び込まれます。重症患者である場合には、集中治療室で24時間体制での受け入れを行っており臨床工学技士もこのICU(集中治療室)をメインに救命救急センターに従事しています。
臨床工学技士の救命センターでの役割は、人工呼吸器の操作をはじめ、PCPS(経皮的心肺補助)やIABP(大動脈内バルーンパンピング)といった補助循環装置やECMO(体外式膜型人工肺)、血液浄化などの生命維持管理装置の操作や点検を行います。
これらの生命維持管理装置は治療中の患者さんの肺や心臓の代わりになる機器で、とても大事な役割を果たしますが正しい知識を持っておかないと扱うことができない難しい医療機器です。
このような場合でも、正しい知識を持った臨床工学技士が操作することでトラブルなく治療を進めることができるのです。
臨床工学技士として救急救命に携わる上での醍醐味はPCPSやECMO、人工呼吸器などの生命維持管理装置を患者さんから外す瞬間にあるのではないかと思います。日々勤務する中で、患者さんに生命維持管理装置を取り付ける瞬間はとても緊張し集中力もかなり使います。
もちろん問題なく取り付けることができ、その後無事に稼働し患者さんの容態が快方に向かっていくのがうれしいですが、容態が良くなった患者さんの体から機器を取り外し、ご自身の臓器が回復して働いている瞬間を見たときの嬉しさは格別です。
何よりも患者の回復に自分が操作していた機器が役に立つというのは医療従事者でないと中々できない経験です。救命救急はとても忙しいと言われますが、その分患者さんが一般病棟に転棟される、患者さんやご家族さんから“ありがとう”の言葉をかけていただけると明日もまた頑張ろうと思えるのです。
緊急性の高い仕事ですので、24時間365日いついかなる時でも呼び出しを受ける事があり、常に緊張感を保ち、精神的にも肉体的にもハードな環境です。
ただ、臨床工学技士として最先端の知識や経験を身に付ける事ができ、また、患者の生命に直接関わる仕事ですので、臨床工学技士として働くやりがいを強く感じられる環境です。
病院で働くメリット・デメリット
病院についていろいろとお話してまいりましたが、ざっくりと分類すると透析をメインとした環境と生命維持装置をメインとした環境に分類されます。
中小規模の病院ですと、その両面を幅広く身に付ける事が出来ます。救命救急センターの場合は、生命維持装置を中心に高度専門的なスキルを身に付ける事ができます。
特に、社会人として初めて働く職場ですので、自分に合ってるのか?長く働くことができるのか?をご判断頂く上で、就職する前に働く上でのメリット・デメリットを改めて知っておくことで、あとに後悔することを減らすことができます。
そこで改めて、事前に知っておきたい病院で働くメリット・デメリットをまとめましたのでご覧ください。
病院で働くメリット
- 手当てが多い(時間外手当、当直手当、待機手当て)
- 週休二日制を取り入れる病院が増えてきている
- 国立・公立・公的医療機関の病院では、昇給が大きく、退職金も高い(公務員・準公務員と同様)
- グループ病院などは、福利厚生がしっかりしていて(育児休暇・産休など)、結婚・育児をしながら働ける
- チーム医療に携われる
- 多くの医療機器を経験できる
- 多くの症例、珍しい症例を経験できる
- 教育プログラムが充実している
- 研究用の医療機器が充実している
- 学会発表の機会が多く、論文投稿の機会もあり、後世に自分の名前を残すことができる
- 臨床工学技士の仕事に専念できる
- 医療人・社会人としての教育制度が充実している
- 病院によっては、定年退職(60歳)以降も同病院や関連施設に再就職が可能
病院で働くデメリット
- 当直・オンコールがあり、精神的、体力的な負担がある
- 生命維持装置を担当する場合、グロテスクな症例にも対応しなければならない
- まとまった休みが取れないことがある。(年末年始、GW、お盆などの当直業務など)
- 学会や勉強会の世話人、雑務をやらなければならないことがある
病院での働き方まとめ
- 臨床工学技士として、社会人として成長でき、目標とできる先輩や仲間がたくさんいる
- 多くの医療機器・症例を経験でき、研究発表をしやすい環境が整っている
- 人数母体が大きく、急な休みがとりやすく、結婚・出産・育児に対応できる
- 生涯年収が高く、定年退職(60歳)以降も同病院や関連施設に再就職が可能
- ある程度の就労期間があれば、他施設でも即戦力となる力を習得できる
- 当直・オンコールがあり、精神的、体力的な負担がある
病院での働き方ついてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?イメージしていたままだった!あるいは違った!違ったけれども許容範囲の仕事内容だったなどなど…それぞれのご感想があるかと思います。
臨床工学技士の新入社員としての就職先は病院が圧倒的に多くなりますが、ご自身が目指す働き方や身に付けるスキルが合っているかどうかを改めて確認してみて下さい。